ストレンジツインズ 兄妹と逆襲の双子 11


 その後リゼルとサーラは宿へ戻ると、場にいなかったフリートの為に今一度ティエラが攫われた理由について話した。フリートはとくにリアクションを示さなかったが、最初から表情の薄い男なので興味があるのかないのかについてはわかりかねるところだ。だが一言だけ、彼は疑問の声を上げた。
「話は理解した。だが、それで結局どこに向かえばいいんだ」
 確かにそれがわからなければティラの救出は不可能だ。さきほどのサーラの話では、連盟に迫害を受けた力あるものの組織が、復讐のためにティラを狙ったということしか分からない。目的が分っても、場所がわからなければ話にならない。しかしその程度のことはサーラとて百も承知だ。
「だから、それを今から割り出すんだ。目的が分からねばその見当すらつけられないだろうが」
 二人の視線を制するように吐き捨て、サーラが手にしていた紙を部屋のテーブルの上に広げる。そして、リゼルとフリートがそれを覗きこんだ。――大陸地図だ。
「私はこの1年ほど、合成獣(キメラ)の異常発生を追い続けてきた。それを振り返ってみると、やつらの発生には色々法則があるんだ」
 言いながら、サーラは取り出したペンで、地図にバツ印を書きくわえて行った。
「最初がメーレ地方。ここで頻発し、次は隣のランフェ。こうして徐々に東へ広がっている。後で気付いたことだが、キメラが異常発生した場所には必ずなんらかの遺跡があった。そしてそのいずれも新しく見つかったもので、誰かが侵入した痕跡がある。私が聞いたもので一番新しいのは、ここからすぐ西のヴァドだが」
「……それ、俺だ。ティラが封印を解いて、そこでユリスに会った」
 そこは、リゼルが初めてユリスと会ったところだった。丁度滞在中に遺跡が見つかり、ティラとヘイルと共に侵入したあの遺跡だ。
「お前に再会する直前に、私はそこでキメラの異常発生をおさめている」
 やはりな、と呟いて、サーラはその場所にもバツ印をつけた。彼女の言うとおり、発生地は東から広がり、これで大陸の東半分がほぼバツ印で埋まった。そこでサーラがペンを置く。
「途中で私も気付いた。私は誰かの足取りを追っているのだと。キメラは、行き場をなくした古代の力の破片だ。誰かが遺跡の封印を解き、そこから零れ出た力がキメラとなる、あるいは喚ぶ。異常発生は人為的なものだ」
「……だとしたら、キメラが発生したところにあいつらはいる……?」
「憶測でしかないがな。ところで、情報収集の結果、ここから南でキメラの異常発生が確認された」
 すっと、サーラの紫眼が細まる。それを受けて、リゼルがフリートへと視線を伸ばすと、彼は無言のまま立ち上がった。
「無理をして足手まといになるくらいなら、留守番を勧める」
「ならば今戦ってみせる。足手まといか否か判断するといい」
「阿呆か。無駄に消耗するだけだろうが」
 辛辣な言葉を返したものの、今の一瞬に叩きつけられた殺気で、リゼルもサーラも彼が戦えることは理解した。普通に答えればいいのにわざわざ言葉以外の方法を選ぶあたり、こちらから返す言葉は辛辣にもなる。
「……お前はどうなんだ、リゼル。大丈夫なのか」
 恐らくこっちも無意味だろう。
 そう思いつつも問いかけたサーラに、リゼルはさも当然とばかりに苦笑する。
「わかってるくせに」
 ため息をついて、サーラは立ち上がった。
 何をどう説得しようが、ティラを放っておくことなんかあと1秒だってできないのだろう。先陣切って部屋を飛び出すリゼルの後について、サーラとフリートも部屋を出るのだった。



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